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2E24 シングル ハイブリッドアンプ

アンプ全景

送信管の2E24を押し入れで暖めていました。これは811Aに引き続いて送信管を探していて興味が湧いてきたので買い置きしていた球です。直熱管でトッププレートであるのは811Aと同じですが、2E24は五極管です。残念ながらヒータの点灯状態は見えなくて、手をかざしてどうにか電源がはいっているのが解る位です。

2011年7月号のMJ誌に、この2E24をOPアンプ(オペアンプ,OPamp)でドライブしたシングルアンプの制作記事が掲載されていました。2E24はゼロバイアスで使用できるので、OPアンプでドライブして直結アンプになる旨の記事です。この記事を参考にしてシングルアンプを制作しました。6V6の送信管タイプが2E24になるらしいです。データシートを見ると、6V6もゼロバイアスで使えそうです。今後6V6も試したいと思います。

DIP品のOPアンプはICソケットを使用して色々差し替えることができます。今回は記事どおりJRCのNJM2114を使用しました。

回路

基板部品面

OPアンプ回りは基板化しました。これによってシャーシ内はほとんどケーブルの引き回しのみになっています。真空管ソケットはUS-8タイプです。このシルクは部品面にありますが、取付けは半田面(裏面)に取り付けます。この半田面が運用時はシャーシ上面になります。基板は、2E24周辺部と入力部(OPアンプ)と±の安定化電源部の各パートを面付けした形で作成しました。OPアンプ部のみカットして別真空管を使うことができます。ただし、パターンがあるのでVカットは入れていません。

全体の回路図

2E24のヒータは6VのスイッチングACアダプターでドライブしています。底面写真で目立っているのでそれと解ると思います。一方で電源トランスの6.3V捲線は3個シリーズにしてOPアンプ用の電源にしています。OPアンプは2114でICソケットを利用しています。2E24のEsgはMJ誌の記事どおり簡易型安定化電源でドライブしています。この記事ではツェナーダイオードに電流を流す抵抗を4.7kΩとしてありましたが、私は150kΩに替えています。4.7kΩだと(327-75V)**2/4.7kΩ=13.5Wとなり、セメント抵抗が必要になります。電圧ドロップが大きいので150kΩを使用したところで抵抗は発熱してしまいます。2Wのものを使用していますが、実使用で60℃程度なのでギリギリ良しとしています。ツェナー電流、TRのベース電流もギリギリです。TR,DI,Rの間隔をもう少し広げた方が良かったようです。本基板を購入された方はRやDIの足を長くして取り付けてください。TRは放熱器を取り付けた方が良いかと思います。

一方OPアンプの消費電流は少ないので、LM317/LM337の放熱器はいらないと思います。それもあって基板配置上放熱器の取付け面積はありません。せいぜい5mm厚のアルミ板を使う位ですが、LM317はフルモールドタイプを使う等して絶縁対策はしてください。

B電源の入り口にあるC9,C29は実装していません。これは音を聞きながら調整になると思います。本来は出力管のACループを短くする為にここにコンデンサを付けた方が良いと思いますが、オプションでパターンのみ作成しています。R9,R29は電源の電解コンデンサの放電用のブリーダ抵抗です。

33kΩのf特

NFB用の抵抗は33kΩとしました。この時-7dBで軽いドライブになります。当初MJ誌と同じ15kΩにしてみましたがf特カーブが高域、低域持ち上がりの変なカーブになりました。Lchのみの計測ですが33kΩでそこそこの特性が出ていたのでこれで良しとしました。出力電力は1kHz,8Ω抵抗負荷で約5Wになりました。

基板

基板写真

今回基板は黒レジストにしました。真空管のハカマ部分から基板が見えるので黒色にしました。基板は136x130mmです。部品の取付けはこの実装図を参照してください。部品を取り付ける前に、J10,J30のプレート接続用のジャック穴をジャックの大きさ合わせて大きくしておいてください。真空管ソケットは裏付けですが、極性キーは部品面のシルクを参照してください。部品のハンダ付けは抵抗等背の低いものから始めて、背の高いソケット、ジャック等は一番最後に取り付けた方が良いでしょう。外部接続用の端子台は私は取り付けずに直付けとしました。数が多くて高価になるので接触不良を避ける意味でも直付けが良いと思います。

基板写真

組立て前の実装写真です。真空管ソケットは裏付けです。

シャーシ

シャーシはタカチのCH7-33-17です。前作の811Aに使用した物より小振りです。2E24に合わせてちょうど良い大きさと思います。ただ電源の平滑コンデンサをSUN_AUDIOのフィルムコンデンサとした為、電源トランスと背の高さが合っていません。ひっくり返して配線するのに不安定になりますので、木片で専用の作業台を作成しました。シャーシはホビー用CNCで加工しました。この為にもシャーシ天板が平板のCHシリーズを選択しました。ケースの加工寸法図はこのpdfを参照してください。

部品

基板上の部品はこの部品リストを参照してください。このリストに上げていないのは真空管ソケット、2E24本体、プレート用のジャック、プレートキャップ、端子台です。前掲の回路図から判断してください。なお、回路図において破線の囲みが基板化した範囲です。その他の部品も回路図から読み取れると思いますが、主な物は以下のとおりです。

  • 電源トランス,PMC-140HG,ノグチトランス
  • チョークコイル,PMC-1010H,ノグチトランス
  • 出力トランス,PMF-7WS,ノグチトランス
  • 平滑コンデンサ,47uFx2,500V,フィルムコンデンサ,SUN_AUDIO
  • 入力ボリューム,2連,100kΩ,ALPS
  • ACアダプタ,6V,1.8A,秋月

試聴

細かな音もクッキリと浮かび上がっているように感じます。素直なf特で、これはほぼ出力トランスの特性が出ているものと思えます。残念ながら無入力状態で、ボリューム10時位から3時位の間にジー音が聞こえます。音楽を聞いていれば聞こえませんが気になるのでこれからの課題です。多分入力部の問題でしょう。

五極管はそもそも三極管に比べるとクッキリと聞こえるように思えますが、それ以上に直結の効果もあるようです。出力管のACループに電源の平滑コンデンサが存在しますが、段間の結合コンデンサが無いので、そのおかげは音に反映していると思います。

その後

ノイズが気になるので、これを取ることにします。

1. まずは2E24のヒータに、電源トランスの6.3VをDC化して与える事にしました。スイッチング電源のノイズが入力段に回り込んでいるのかも知れません。一方入力段OPアンプの電源は、20V出力の小さな電源トランスに変更しました。立ラグ板では部品配線が難しいので整流回路を穴空き基板に組込みました。AC6.3V--ブリッジダイオード--1Ω抵抗--1000uF電解--2E24の良くある回路構成です。結果は、Phono入力ショートでも大きなハム音でとても音楽を聴く気になりません。オシロでみてもかなりリップルが多いようです(120Hz)。

2. そこで10000uFの電解コンデンサをパラにしました。オシロではリップルは見えません。聴いたところ、アンプの電源が入ったというノイズ感はありますが、気になるようなノイズではありません。しかし、試聴してみると何かもの足りません。ベールをかぶったような音で、最初のような元気がありません。他のアンプでプレート電流が少ない時と同じ感じです。ヒータ電圧を測ると約5.2Vでした。直熱管なのでヒータの加熱が少ないと、カソードに流れる電流も少なくなるのかも知れません。残念なのは、ここでプレート電流を測っておけば良かったのですが、忘れて次の処置をしてしまいました。

変更した配線

3. 整流回路の抵抗の代わりにコイルを入れてみました。ただし抵抗をはずすのが面倒だったのでパラに入れています。ヒータ電圧は約6.2Vになりました。コイルは120uHなのでほとんどフィルターは効いていないと思います。若干ハム音が大きくなってはっきりとノイズ感があります。クラシック等の静かな部分では少し気になります。聴感ではパンチが戻ったように聞こえます。

ここまで直熱管に対して当たり前のことをしてきているようです。そう言えば、例えば300Bの良くある制作例では、ハムバランサーと称してボリュームがヒータにパラに入っていますね。

写真は最終的な状態です。秘密は両サイドのパネルの内側に隠れています。

DC-DCコンバータ

4. データシートによると2E24のヒータ電流は0.65Aとなっています。これくらいならば自社のDC-DCコンバータで十分賄えます。そこで6.2V出力設定に変更して、DC-DCコンバータでヒータ電圧を供給するようにしました。入力電圧が出力電圧と近ければリップルは取りきれないでしょうから、電源トランスからのAC供給をを6.3V+6.3Vと6.3V+5Vにしました。1次側に1V位のアンバランスがあっても問題無いでしょう。結果はバッチリで静かです。ノイズは消えました。スピーカに耳を近づけても、ヘッドフォンでもノイズは聞こえません。オシロで見るとmVオーダーのスイッチングノイズは残っていますが、可聴域外なので問題ありません。電圧は印可時に6.02V/5.99Vになりました。

やはり、静かなアンプが良いですね。安心して音楽に没入出来ます。安くて小さいからと、中華製のスイッチング電源を最初に使用したのが間違いでした。傍熱型であれば中華製でもノイズは聞こえなかったかも知れませんが、直熱型に音を求めているのでヒータ電源はケチる事は出来ませんね。

貼り付けた

5. そうは言いつつ、パイロットランプとしてのLEDの電源をヒータから取っています。LEDから発生するノイズを気にしましたが、それを感じないので問題は無いと思います。電源スイッチ内蔵のLEDが切れて、電源が入っている事が解らない。また2E24はヒータの赤熱が見えない。この2点の為に電球色のLEDで、真空管をシャーシ内から照らしています。誤魔化したみたいで好きでは無いのですが。

写真において、真空管ソケットの1-2番ピンの間の穴にLEDを接着してあります。放熱用の丸穴がちょうど5Φなので砲弾形LEDにピッタリです。DC-DCコンバータはサイドパネルに両面テープで止めています。真空管の近くに置くことにより、定電圧になった2次側配線を短くしています。