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LUXKIT KMQ60のレストア
LUXMAN KMQ60をレストアしてみました。Kが付くキット品ですからオリジナルを保たなければならないと言うことはありません。オリジナルの配線を参照しつつ自由に配線したレストア品です。固定バイアスの供給にFETリプルフィルターを組み入れて、供給インピーダンスを下げて片チャネルの影響を受けにくい、調整のし易い物にしました。
ジャンク状況
レストアの勉強をすべく、部品配置がシンメトリーで気に入ったKMQ60を、ジャンクで入手しました。リファレンスもいるだろうと言う事で動いているKMQ60も入手しました。欲が出てもう一台ジャンクを購入しました。が、ジャンクはどうやらトランスの断線が多いようです。バイアスのバランスが崩れたまま使って、過電流を流してコイルを焼いてしまうようです。特にこれのトランスは線が細いので(直せないかと中身を取り出して見ましたが断念しました)断線事故が多いようです。大体は1次側ですが、ジャンクの1台は2次側の断線もありました。1次-2次間のショートもありました。LUXのサービスに聞いたところ、巻き直し修理は(新品は無し)3万円を越えるそうです。オークションの方が安いくらいです。過去の遺産を大事にしたいと思いますし、しましょう。古いアンプはオーバーホールしてから電源を入れていただきたいと思います。何の知識も無くいきなり電源を入れて音が出ないからジャンク、とか言う説明文をオークションで良く見かけます。壊さないで出品して欲しいですね。LUXKITのKMQ60は左右に出力管が振り分けてあり、シンメトリーで気に入っています。出力管の50C-A10も丸っこくて良い感じです(6EM7でもそう言っていましたが)。日本橋を何店か回りましたが全てレストア済みで10万円以上しています。特につては無いのでオークションにてジャンクを入手しました。
50C-A10のソケットを交換すべくタイト製を購入しましたが、1ピンの向きがオリジナルと異なるようです。また色あせているとは言え、オリジナルの緑色の方がアクセントになって良さそうです。そこで宝石用の薬液で洗浄しました。コンタクト部分も綺麗になっています。もう少し濃い緑色のソケットもネットで見かけます。残念ながら入手した物は全て薄い緑色でした。色あせたのでは無くて最初から薄緑と思われます。
電源トランスは艶消しスプレーで再塗装してあります。トップの銘盤を磨いても綺麗にならなかったので紙やすりで磨きました。真鍮の地が出て来てこれはこれで良いかな、と言うことにして軽くクリアーを吹きつけて錆止めとしておきました。
交換部品
ここまでやるとレストアかリメークか解らなくなって来ます。依頼されたレストアで無いので予算は私の懐次第になりました。
- スピーカプラグ: オリジナルは背が低くてシャーシとショートの可能性もあるので新品に交換してあります。そのうえに軸が長かったのでカットしました。
- PHONEジャック: 金メッキ品に交換しました。何も加工が必要なく取付出来ました。
- ボリューム: 100KΩの通信用に交換してあります。つまみは再利用です。
- C/R: ほとんどのCRは新品です。ただし17KΩと20pFは古い物を使いました。
- 電解コンデンサ: リプルフィルターの電解コンデンサも新品にしましたが、33uFx2が50uFx2に、47uFx2が100uFx2になりました。それしか入手出来なかったのでこの値です。固定バイアス用の47uFx2は使用していません。代わりに47uF単品を使用しました。
- 出力補正のフィルターR: 元は22Ω1Wでしたが同等品を付けたらフル出力で煙が出たので27Ω3Wに交換しています。
- MT管のソケット: これは迷わずに新品です。
- ラグ板: 一番長いものはモールドタイプに変えています。ネジ穴をヤスリがけしたら入りました。立ラグは新品と旧が混在しています。追加したラグもあります。
- ヒューズホルダー: 電源ケーブルも含めて新品です。
- 電源スイッチ: オリジナルが大きくてソケットの邪魔なのでショートタイプに交換しています。
- ネオンランプ: シャーシ内のケーブルが長かったので新品に交換しています。
- その他: ネジ類はほとんど、特にM3は新品です。磨くより交換した方が早いので。
配線状況
キットの取説は無視して自由に配線してみました。C/Rはほとんど交換したので綺麗です。電源トランスの銘盤のところにあるボリュームは今回の目玉の、FETリップルフィルターによる固定バイアス電源です。
初段、ドライブ段の回路はオリジナルと同じです。ただしボリュームの値が250KΩを100KΩに変えています。当初位相反転段をCRDの予定でしたが間に合わなくて、オリジナルの抵抗を使いました。
出力段のカソードに100Ωを入れて暴走対策とバランス調整としました。バランス調整だけでは10Ωで十分ですし、マルチメータのレンジとしてはこの方が測り易かった経験があります。今回は暴走対策も兼用したので100Ωにアップしました。その為電解コンデンサもパラに入れています。バランス調整部分の構成は同じですが33KΩを22KΩに変更しています。
固定バイアスについて
バイアス電圧の供給はリプルフィルター方式で左右別々の回路で供給しています。オリジナルではここは10KΩの半固定抵抗になっており、先のバランス部分と同じような抵抗値になっています。その為右側のバランスを調整したら左のバイアス電圧が変化するような事になっていました。マニュアルにも交互に調整して徐々に合わせて行くような書き方がしてあります。これは非常に調整しにくく不便です。そこでバイアス電圧の供給源のインピーダンスを低くすればいいのでFET出力とした訳です。合わせてリプルフィルターも兼用出来ます。定電圧源にする手もありますが、この場合はB電源も定電圧にしなければ、AC入力が変動した場合、バイアスが浅い方になればIpが増える可能性があります。その為定電圧にはしていません。結果は目論見通りで調整のし易い物になりました。若干は片側の影響を受けますがオリジナル程ではありません。
レストアKMQ60の回路図
回路図はメーカの物を私流に書き換えた片chです。カソード抵抗100Ωを追加してバランス調整し易くしてあります。特に元回路と異なるのは、カソード抵抗の存在とバイアス電源部分です。
KMQ60のシャーシ
シャーシだけを写してみました。綺麗なシャーシです。
50C-A10のソケット
今回はソケットを再利用しました。購入したタイトソケットはピンの向きが異なるようです。
通電中のKMQ60
電源を入れました。ヒータの点灯状態を狙っての撮影です。
ラックの中のKMQ60
ラックに入れた状態で正面から撮影しました。おまけで。