ImpactSystems(インパクトシステム)

ポップノイズ対策基板

アンプ内部俯瞰

ヘッドホン(ヘッドフォン)を外してから電源を切るにしても、ポップノイズの存在は気になります。ポップノイズとは、電源を入れたり切ったり(ON/OFF)する時に聞こえるボッとかブツッとかの音です。電源OFF時の音の方が大きいようです。
前記事の最後に、このポップノイズを捉えた波形を載せています。オペアンプの電源降下時に発生していますので、電源のアンバランス状態が原因と思われます。そこで対策として、アンプ出力をリレーでショートするように基板を改版しました。
結果は良好で、ノイズは全く聞こえません。電源を入れた時に聞こえたかな、と言うときはありますが、電源OFF時は静かで無音です。ポップノイズが消えた、と言って良いでしょう。

基板説明

アンプ基板実装済

写真左側が信号入力で、MUSES72320に入ります。オペアンプで左右信号に分かれて(写真では上下位置)、出力端子直前にSSRのLCB710があります。電源はMUSES72320の上側から供給します。反対、下側の6列ピンはCPUからの制御信号を受けます。前回3枚に分かれていた基板を1枚にしました。

ポップノイズ対策のリレーですが、SSR(半導体リレー)のLCB710(IXYS社)を採用しました。メーカーではOptoMOSの商標のようです。単極、1b(Normally Closed,Normally Contact)タイプのリレーです。内部LEDに電流が流れていないとき(電源OFF時)に接点がONとなり、オペアンプ出力をグラウンドにショートします。電源ONから約1秒後にCPUは接点を開放にしてショートを解消します。電源OFF時は再び接点を接続して出力をショートし、電圧降下に備えます。リレーは出力回路にシリーズ(直列)ではないので、音質に影響することは無いと思われます。ただし、直列に47Ωの抵抗を挿入して過電流対策としています。

オペアンプ(OPアンプ)はMUSES8920を実装しています。写真を良く見ると、オペアンプのロットが異なります。共立電子産業から奇数で購入したため、前作に使用した余りと、秋月電子通商の電子ボリュームキットから外したオペアンプとを、この基板に実装しています。音の違いはわかりません。聴き比べしていません。

基板には実装していない部品がありますが、これはJFET入力タイプのオペアンプに限らず、バイポーラタイプも使えるようにしている為です。更に、2E24シングルハイブリッド真空管アンプでの使用も考慮しています。回路図を参照していただきたいと思います。

アンプ生基板

グラウンドは前作基板と同じく、MUSES72320の6,11ピンを一点アースとしています。JRCに問い合わせたところ、入力のボリューム(Att=減衰器)のグラウンド接続は、3ユニットに別れたボリュームの最初の電流が大きい部分が7,11ピンとのことでした。ドキュメントでは20kΩの可変抵抗一本で描いてありますが、内部では3段構成になっており、最初のユニットが7,11ピン、中段が4,13ピン、最終段が2,15ピンのグラウンドに相当するそうです。これらはIC内部で接続されていないので基板上で接続しなければならないそうです。ドキュメントの大、中、小の電流区分はそのような意味になます。
「(IC内部で大・中・小信号用のGNDを接続するよりも、プリント基板上で接続した方が共通インピーダンスの影響を低減できる) --- 添付いただいたpdfの文言より」

オペアンプ以降の電源/GNDは左右信号に分離しています。基板写真の中央に平行に走っている太い配線がそれぞれのGNDの一部です。最後まで(ヘッドホン,あるいはメインアンプのスピーカ端子)左右分離する考えです。入力も左右のグラウンドが別々にMUSES72320まで配線するように考えています。ただし、ヘッドホンは3ピンなのでどうしてもここでGNDが共通になります。
電源のGNDもMUSES72320で一点アースに接続しています。こうすることで電源のリターンに信号のリターンが重ならないので共通インピーダンスは最小になるでしょう。電源のGNDは作成した部分でシャーシに落として、他の電源とレベルを合わせます。

サウンド・ブレイク

2E24真空管はあまり熱くならなくて、これからの暑い季節に聞く真空管アンプとして最適なのですが、現在このプロジェクトの為に使えない状態です。代わりに811Aシングルアンプを使用しています。電球2本分の熱はこれからの季節、苦行になってきます。

このヘッドホン・アンプで前回紹介したダウンロード曲をチェックしていたのですが、Milse DavisのSo Whatの後半でエコーが目立ち始めました。レコードの隣の溝の音が聞こえるようにも思えます。ワザとエコーを入れることはないだろうと最初、基板のパターンを疑いました(クロストーク等)。811Aアンプで同じ音源を聞いてみたところ、オペアンプ基板より目立たないけどもやはり聞こえました。状況からするとスタジオの残響のように思えます。リマスタリングで浮かび上がって来たものでしょうか。CD音源に変えて聴いてみたら、聞こえました。今まで気づかなかった、あるいは忘れていただけでしょう。結局、このオペアンプ基板の特性で目立つのだと思います。(少し賑やかに聞こえる。--811Aに比べて)オシロで方形波を観測すればはっきりするのでしょうけど、それはそのうちに。

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回路図

it491a回路図

MUSES72320とオペアンプの部分は前作及びJRCのドキュメント回路と同じです。JFET入力でもバイポーラ入力でも抵抗の付加あるいはジャンパー処理で両用できるようにしています。また、2E24ハイブリッドアンプのオーバーオール負帰還回路を追加しているのも前作と同じです。なお、オペアンプはJFET入力タイプのMUSES8920で動作チェックしました。バイポーラ入力タイプは動作チェックしていません。

前作との違いは、MUSES72320のゲインコントロールボリュームを使用しているところです。フィードバック部分のパターンが長くなるのであまり好みでは無いのですが、JRCのドキュメントのとおり構成してみました。
そうするとオペアンプは2回路入りなので、これをどう割り振るかが悩むところです。この回路図以外に、左右のゲインコントロールアンプを1ICにする方法もあります。これはJRCのドキュメントのイメージそのままになります。その構成ではバッファアンプまで左右同じグラウンドのイメージになります。更に電源パターンの引き回しも楽です。しかし、今回も分けられるところは分けておく、との考えで回路図のように左右で1ICずつの構成としました。

MUSES72320のゲインは30.5dB固定です。前作においてもオペアンプのゲインは固定です。この定数は(33kΩ/1kΩ)でしたから増幅度は34倍となり、20log10(34)で30.6dBです。よってMUSES72320のドキュメントより30.5dBになる設定をCPUに組込みました。この設定においてボリュームつまみの同じ傾きで同じ音量に聞こえました。

初段オペアンプのマイナス入力(NFB)はMUSES72320の、例えば4,6pinのGNDに挟まれています。これを使ってガードリングをすることができました。

バッファ出力に1bタイプのSSR(IXYS社、LCB710)を追加して、ポップノイズ対策をしています。ノーマルコンタクトの半導体リレーです。電源の入っていない状態では接点ONのリレーと同一の働きをします。これによって電源投入時のポップノイズを抑制しています。このSSRのON/OFFの為に、CPUの制御信号を追加しています。回路図のとおり、左右のSSRはどちらも1個のO.C(オープンコレクタ)で駆動しています。CPUから見て、このトランジスタのベースに"1"を出力するとリレーのLEDに電流が流れ、リレー接点はOFFになって信号が出力されるようになります。

CPUは電源電圧を監視していて、一定電圧に降下すると電源OFFと判断し、自分が停止する前に、先のトランジスタのベースに"0"を出力します。これによりリレー接点がONになって、ヘッドホン入力が短絡しますから、その後のポップノイズは聞こえないということになります。CPUがOFFになればトランジスタ入力はGNDレベルを継続しますから、リレーのLEDに電流は流れなくて、リレー接点のONは継続します。